2013年12月17日の隕石の軌道の推定

2013年12月17日21時45分すぎに、関西地方で火球の観測報告がありました。 (参考) 我々は地震計のデータを利用して、音波が地上に到達した時刻を調べ、火球の軌道を推定しました。

飛行経路の推定には、以下の2つのモデルを仮定しました。
・火球が爆発あるいは消滅する時にある一点で信号を発生したとする点震源モデル
・火球が進行しながら信号を発信し、さらに消滅時にある一点で信号を発生したとする線震源と点震源モデルを組合せたモデル
両者のモデルを比較した結果、この火球は点震源モデルで十分再現できることがわかりました。

このように地震計で飛行経路を推定した例は、1987年9月11日広島の隕石(長沢・三浦、1987 BERI)や1998年3月30日宮城の隕石(Ishihara et al, 2003 EPS)、2010年8月7日琵琶湖の隕石 (Yamada and Mori, 2012 EPS)、 2013年1月20日関東地方の隕石2013年2月15日のロシアの隕石 などがあります。また、スペースシャトルの飛行経路も地震計によって推定されています(Kanamori et al., 1991 Nature)。



図1 地震計に記録された衝撃波の到達時刻(21時40分からの秒数)



図2 点震源モデルを用いて推定した衝撃波の到達時刻。衝撃波の到達時刻を最もよく説明するモデルの信号の消失点は、北緯35.08度、東経136.20度、高度55km。衝撃波の発生時刻は21時45分35秒に固定した。



図3 距離の順で並べた地震波形。500秒から750秒にかけて、音速で伝わる信号が見られる。



参考文献:

Yamada, M. and J. Mori (2012). Trajectory of the August 7, 2010 Biwako Fireball Determined from Seismic Recordings. Earth, Planet and Space, Vol.64-1, pp.27-35. pdf

Ishihara, Y, Tsukada, S, Sakai, S, Hiramatsu, Y, and Furumoto, M. The 1988 Miyako fireball’s trajectory determined from shock wave records of a dense seismic array. EPS 55, 2003

Ishihara, Y, Furumoto, M, Shin'ichi Sakai, ST. The 2003 Kanto large bolide's trajectory determined from shockwaves recorded by a seismic network and images taken by a video camera. Geophysical Research Letters 31(14):L14702, 2004

Kanamori, H., J. Mori, D. Anderson, T. Heaton, Seismic Excitation by the Space Shuttle Columbia Nature, 349, 781-782, 1991.

Mori, J. and H. Kanamori, Estimating trajectories of supersonic objects using arrival times of sonic booms, U.S. Geological Survey Open-File Report 91-48, 15 p., 1991.

長沢工; 三浦勝美 地震計記録から決定した 1987 年 9 月 11 日の大火球の径路. 東京大学地震研究所彙報. 第62冊第4号, pp. 579-588, 1988


謝辞:
本研究では、防災科学技術研究所、気象庁、全国の大学の地震観測ネットワークによって記録されたデータを利用しました。


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