2013年10月16日伊豆大島の土砂崩れの発生時刻推定

2013年10月16日から4日にかけて台風26号がもたらした大雨により、伊豆大島で大規模な土砂崩れが発生しました。本災害により亡くなられた方々のご冥福お祈りし、被災され た多数の方々にお見舞いを申し上げます。

我々は地震計のデータを利用して、土砂崩れが発生した時間を推定しました。 解析の結果、午前2時3分にやや大規模で2分程度続く振動がありました(図1参照)。これが最初に発生した土砂崩れであると考えられます。また、これより大規模の振動が2時22分、同32分、同27分、3時2分にも見られます。2時22分の振動は継続時間が短く1分程度、それ以外の3つの信号は2分程度の長い継続時間を示しています。

午前2時半以降午前4時まで、振幅の小さい信号が無数に見られます。これは、土砂崩れが継続して起こっていたことを示すと考えられます。 土砂崩れが発生し始めた午前2時での積算雨量はおよそ500mmでした(図2参照)。

土砂崩れの発生場所の逆解析も試みましたが、精度があまり高くないため、ここでは地すべりの場所を経度139.37、緯度34.74に固定しています(図3参照)。高精度の場所推定は今後の課題です。

このように地震計で土砂災害の信号をとらえた例は、1980年5月18日のSt. Helens山の噴火にともなう崩落、2006年2月17日のフィリピン・レイテ島での地すべり、2011年9月の台風12号の紀伊半島の深層崩壊などがあります。



図1 午前2時から午前3時半までの地震計の連続波形



図2 1時間ごとの降水量と降り始めからの積算降水量(気象庁ウェブサイトより)



図3 伊豆大島における高感度地震計の分布。黒色は航空写真より推定した土砂崩れの場所、楕円は地震計から求めた2時22分の土砂崩れの推定場所。

参考文献:

Yamada, M., Y. Matsushi, M. Chigira, and J. Mori (2012). Seismic recordings of the Landslides caused by Typhoon Talas, Geophysical Research Letters.


謝辞:
本研究では、防災科学技術研究所、気象庁、全国の大学の地震観測ネットワーク、東京大学地震研究所の伊豆大島火山観測網によって記録されたデータを利用しました。ここに記して謝意を表します。


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