2011年9月奈良県の地すべりの発生時刻推定

2011年9月3日から4日にかけて台風12号がもたらした大雨により、奈良県で多数の深層崩壊を含む土砂災害が発生しました。

我々は地震計のデータを利用して、地すべりが発生した場所や時間を推定しました。 地すべりの波形は、地震とは異なる形をしており、小さい振幅からなだらかに始まります。そして、同規模の地震よりも長い周期が卓越しています。 解析結果より、地すべりの信号の振幅は地すべりの体積との相関が見られることが分かりました。 これは、今後地震波形から地すべりのサイズを推定できる可能性を示しています。

このように地震計で地すべり信号をとらえた例は、1980年5月18日のSt. Helens山の噴火にともなう崩落、2004年8月10日の奈良大塔村での地すべり、2006年2月17日のフィリピン・レイテ島での地すべりなどがあります。

詳しい解析結果は、論文をご覧ください。



表1 地すべりの発生時刻と推定位置



図1 地すべりの波形の例と、3Dレーザースキャンで得られた地すべり前後の地形変化



図2 地すべりの分布(青丸)と地震計の位置(赤丸)。カラーコンターは地すべりの位置推定の結果



図3 距離によって並べた地すべりの波形。距離が遠くなるにつれて信号が遅く、小さくなっている。



図4 地すべりの体積と地震波形の振幅との関係。地震波形の振幅と相関が見られる



参考文献:

Yamada, M., Y. Matsushi, M. Chigira, and J. Mori (2012). Seismic recordings of the Landslides caused by Typhoon Talas, Geophysical Research Letters.

Kanamori, H., J. W. Given, and T. Lay (1984), Analysis of seismic body waves excited by the Mount St. Helens eruption of May 18, 1980, J. Geophys. Res. 89, 1856-1866.

Lin, C.H., H. Kumagai, M. Ando, and T.C. Shin (2010), Detection of landslides and submarine slumps using broadband seismic networks. Geophysical Research Letters 37(5), doi:10.1029/2010GL044685.

Osumi, T., H. Asahara, E. Shimokawa (2005), Analysis of Ground-vibration induced by the 10 August 2004, Ohtou Landslide in Nara Prefecture, Japan using the Data of High Sensitivity Seismograph Network : Application to Landslide Detecting, Journal of Japan Society for Natural Disaster Science, 24(3), 267-277 (in Japanese).

防災科学技術研究所:台風12号の土砂災害域からの地震波を観測 http://www.bosai.go.jp/press/2011/pdf/20110912_02.pdf


謝辞:
本研究では、防災科学技術研究所、気象庁、全国の大学の地震観測ネットワークによって記録されたデータを利用しました。3Dレーザースキャンのデータは国土交通省からご提供いただきました。ここに記して謝意を表します。


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