三井化学工場の爆発に伴う衝撃波

2012年4月22日2時15分頃、三井化学工場で爆発事故が発生し、広島県南部に衝撃音と地震のような振動が観測されました。 この衝撃音は、爆発時に周辺の空気が瞬間的に高圧になり、それが解放されるときに発生した衝撃波と考えられます。 地震のような振動は、衝撃波が建物の窓や壁に到達したとき、建物を揺らすことによって発生します。

我々は地震計のデータを利用して、衝撃波の到達範囲を推定しました。 その結果、少なくとも150km東側の香川県坂出付近まで衝撃波が伝わっていることが分かりました。 この衝撃波は、音速とほぼ同じ0.33km/sで進んでいます。 また、西側ではほとんど衝撃波は観測されておらず、工場の東側の広い範囲で衝撃波が観測されていることが分かりました。 爆発に伴う地面の揺れ(図2で100秒のあたりに存在する信号)は、20kmより遠方ではかなり小さくなっていますが、衝撃波は20kmより遠方でもかなり大きな振幅が観測されています。

爆発では多くの被害が発生し、多数の死傷者がでました。亡くなられた方のご冥福をお祈りすると共に、被害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げます。



図1 強い衝撃波を観測した地震計の分布図。東側の広い地域で衝撃波が観測されている。地表の観測点では大きい衝撃波が観測され、地中では小さい。丸印の色は速度波形の振幅を示す。(単位:x10^6 cm/s)



図2 工場からの距離で並べた地震波形。地表の観測点では大きい衝撃波が観測され、地中では小さい。衝撃波の進行速度は約0.33km/s。100秒のあたりに存在する信号は地中を伝わる地面の揺れ。


謝辞:
本研究では、防災科学技術研究所、気象庁、全国の大学の地震観測ネットワークによって記録されたデータを利用しました。


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