2020年8月4日 レバノンの爆発事故の衝撃波

2020年8月4日18時7分すぎ(現地時刻)にレバノンのベイルート市で爆発事故が発生しました。報道によれば、港湾地区が大きく崩壊し、多数の死傷者が出ている模様です。この悲報に接し心から哀悼の意を表します。

我々はIRIS、GFZ、ボガジチ大学、イスラエル地震観測網の地震計データを利用して、爆発の振動を解析しました。信号は300q以上離れた観測点でも記録され、立ち上がりのはっきりしたP波と、P波よりも振幅が小さく到着が明瞭でないS波が見られました。

爆発は港湾地区の海岸に面した場所で発生しています。そのため、陸側の観測点では波は地表を伝わってP波速度で伝播しています。一方、海側にあるキプロス島の観測点では、地表を伝わる波の振幅は非常に小さく、海中を伝わるT波が大きく記録されています。 また、爆発時に大きな衝撃波が発生し、特に海側のキプロス島の観測点において、音速で伝わる衝撃波がはっきりと記録されています。

アメリカ地質調査所(USGS)の解析ではマグニチュード(ML)は3.3相当とのことですが、地表での爆発は地中での地震よりも地震波が伝わりにくい(エネルギーが空中に放出されるため)と考えられることから、非常に規模の大きな爆発であったことが推察されます。



図1 レバノン周辺の観測点分布



図2 地震波形を距離の順に並べたもの(1-8Hz)。
キプロス島の観測点では、海中を伝わるT波が大きく観測されている。
P波の立ち上がりは明瞭で、S波の到着ははっきりしない。



図3 図2の横軸を長くしたもの(1-8Hz)。
キプロス島の観測点で、特に大きな衝撃波が観測されている。



図4 フランス通信社(AFP)の写真に加筆したもの。星印が爆発のあった場所。
陸域と海域の境界にあたる。


謝辞:
本研究では、IRIS、GFZ、ボガジチ大学、イスラエル地震観測網の地震計データを利用しました。


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