2016年9月9日の北朝鮮の人工地震の震源推定

2016年9月9日9時30分頃、北朝鮮付近を震源とする地震波を観測したという報告が気象庁からありました。 (第1報, 第2報 ) 我々はHi-netの地震計のデータを利用して、P波が到達した時刻を調べ、震源位置を推定しました。

日本全国に分布するノイズレベルの低い24点の記録を用いて、P波検知を行いました。その後、気象庁の一次元速度構造を利用して、震源を推定しました。推定された震源は、北緯41.27、東経129.17に求まりました。また、震源時刻は9時30分頃と推定されます。

地震波形から、P波が明瞭に記録されているのに比べ、S波は不明瞭であることが確認できます。このような特徴は、人工爆発などによく現れることから、今回の地震が人工的なものであった可能性を示唆しています。



表1 推定された震源位置
指標 推定値 誤差
緯度 41.275度 0.035度
経度 129.171度 0.070度
深さ 0.45km 0.38km
震源時刻 2016/09/09 9:29:57.48 0.75秒


図1 解析に使用したHi-netの地震計の位置



図2 北朝鮮の実験施設の様子 参考:USGS website



図3 距離の順で並べた地震波形。明確なP波に比べ、S波はほとんど観測できない。



図4 上の場所における爆破震源を仮定し、インバージョン解析で求めた震源時間関数(周波数0.02-0.08Hz)。2013年2月12日、2016年1月6日のイベントよりも振幅が大きくなっている。震源の波形は非常に良く似ている。



参考文献:

USGS, M5.3 Explosion - 19km ENE of Sungjibaegam, North Korea, 2016-09-09 00:30:01(UTC) 41.298N 129.015E 0.0km depth website

気象庁報道発表資料 北朝鮮付近を震源とする地震波の観測について (第1報, 第2報


謝辞:
本研究では、防災科学技術研究所の地震観測ネットワーク(Hi-net, F-net)によって記録されたデータを利用しました。インバージョン解析には、Nakano et al. 2008, GJIの解析コードを利用しました。


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