2020年8月21日の火球の軌道の推定

2020年8月21日22時30分すぎに、関東地方で火球の観測報告がありました。 (参考 SonotaCo Network Japan) 我々は地震計のデータを利用して、音波が地上に到達した時刻を調べました。

図1に示すように、衝撃波の信号は三宅島から伊豆半島の広い範囲にかけて観測されています。 到達時刻が最も早いのは伊豆大島の観測点で、22時35分30秒前後です。

隕石の飛行経路の推定を試みましたが、海域で観測点分布が不均等なせいで誤差が大きくなり、 単純な線震源モデルではうまく経路を推定することができませんでした。 風の影響や大気中の速度構造の不均一性の影響を強く受けているかもしれません。
ノイズデータを取り除いたところ、うまく飛行経路を推定することができました。

(2020/8/29追記)
隕石は南南西から北北東へ移動したことが分かりました。 隕石の軌道を延長して地表と交差したとすると、交差点は房総半島の南側の海域に決まりました。




図1 地震計に記録された衝撃波の到達時刻と、到達時刻を説明する線震源モデル
(時間は22時30分からの秒数)
(背景の色が衝撃波の到達時刻を最もよく説明するモデル)。
隕石の軌道を延長して地表と交差したとすると、交差点は北緯34.85度、東経139.86度(星印)。
地表と軌道の間の仰角は46度、軌道の方位角は217度(南南西から北北東へ移動)。
図2 2-8Hzのフィルタをかけた地震波形。(時間は22時30分からの秒数)
地表と軌道の交点から距離の順に並べてある。



参考文献:

Yamada, M. and J. Mori (2015). Seismic Observations of the Sonic Boom Produced by the Chebarkul Meteorite. 京都大学防災研究所年報, pp.47-52. pdf

Yamada, M. and J. Mori (2012). Trajectory of the August 7, 2010 Biwako Fireball Determined from Seismic Recordings. Earth, Planet and Space, Vol.64-1, pp.27-35. pdf

Ishihara, Y, Tsukada, S, Sakai, S, Hiramatsu, Y, and Furumoto, M. The 1988 Miyako fireball's trajectory determined from shock wave records of a dense seismic array. EPS 55, 2003

Ishihara, Y, Furumoto, M, Sakai, S., and Tsukada, S. The 2003 Kanto large bolide's trajectory determined from shockwaves recorded by a seismic network and images taken by a video camera. Geophysical Research Letters 31(14):L14702, 2004

Kanamori, H., J. Mori, D. Anderson, T. Heaton, Seismic Excitation by the Space Shuttle Columbia Nature, 349, 781-782, 1991.

Mori, J. and H. Kanamori, Estimating trajectories of supersonic objects using arrival times of sonic booms, U.S. Geological Survey Open-File Report 91-48, 15 p., 1991.

長沢工, 三浦勝美, 地震計記録から決定した 1987 年 9 月 11 日の大火球の径路. 東京大学地震研究所彙報. 第62冊第4号, pp. 579-588, 1988


謝辞:
本研究では、防災科学技術研究所、気象庁、全国の大学の地震観測ネットワークによって記録されたデータを利用しました。


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