活火山モニタリングシステムの充実は、火山防災の観点から、近年ますます重要になっている。現在、草津白根火山では、 複数の双極子電流ソースから互いに混信しない周波数信号を送信する精密なモニタリングシステム(ACROSS; Accurately Controlled Routinely Operated Signal System)の構築が計画されている。草津白根火山では、火口直下に釣鐘型の低比抵抗キャップが存在し、微小地震がその下方に分布することが、これまでのMT探査から明らかになっている。この結果は、深部からの火山ガスがこの釣鐘型の低比抵抗粘土キャップにトラップされている可能性を示唆しており、この釣鐘型低比抵抗体の状態を常時把握することが防災上重要である。  本研究では、草津白根火山で計画されている精密モニタリングシステムの構築に先立ち、システムに対する釣鐘型低抵抗体の応答を、モデル計算によって調べた 。モデル計算では、四面体有限要素法(A法)を採用し、0.01S/mの一様大地に半径500m・厚さ200mの釣鐘型の低比抵抗体(0.3 S/m)を地下100mに頂部がくるよう半球殻と円筒を用いて表現した。観測計画を考慮して、低比抵抗体から5km離れた地点で、長さ1kmの水平双極子から1Aの電流を 0.01, 0.1, 1.0, 10, 100 Hzの5周波数で送信した場合の計算を行った 。今回は、数値計算の精度を確かめる目的から、地形は考慮せず、低比抵抗体がない場合の解析解との比較も同時に行っている。計算の結果 、計算した全ての周期で電流双極子と直交する水平電場成分に低比抵抗体の影響が出やすいこと、並びに、短周期の磁場鉛直成分に低比抵抗体の影響が出やすいことが明らかとなった。さらに、釣鐘型低比抵抗体の頂部の厚さを200mから50mに変化させた結果、電場水平成分の振幅・位相差として変化を検出できる可能性が高いことが明らかとなった。これらの結果は、 火山体に対する電流双極子を用いた電磁探査の有用性を示唆しており、同様の計算を用いることで観測効率の高い観測アレイの構築が可能となる。  本発表では、上記の計算手法と計算結果に加え、実際の草津白根の地形を考慮した場合の計算結果についても併せて報告する予定である。